07.七日目 朝






今日は偶の休日、私はサシャと一緒に朝から街へと出掛けていた。
本当は、昨日からの絶望を引き摺って部屋に閉じ籠っていようと思っていたのだけど、そんな私を見兼ねたサシャが、元気付けてくれようと半ば無理矢理に街へ連れ出した。
親友である彼女の好意を無下にも出来ず、何よりその心遣いが素直に嬉しかったから、私は重い腰を上げて出てきたのだった。






「久し振りのお出掛けですねー!何食べます?」
「今さっき朝御飯食べたところでしょうが…」



朝食の後すぐに出てきたというのに、もう既にあちこちの料理や果物に目を奪われているサシャ。
相変わらずブレないなあこの子は。
サシャの本体ってきっとお腹の虫なんだわ、とか割と本気で考えてしまうくらい、彼女は食に貪欲である。





「ナマエ、早くっ!早く行きましょう!」
「はいはい、分かった分かった」


私の手を引いて急かすサシャに連れられて、私達は近くの店へ入った。









「ナマエ、これも美味しそうですー!」
「ふふ、サシャは何見てもそれだねぇ」


はしゃぐサシャを宥めながら、取り取り並ぶ商品を見て回る。
色々な食べ物が陳列されている中、私はある一つの小瓶に目を奪われた。



「…これは…」


手のひらに収まるくらいの小さな瓶の中に、黄金色のとろりとした液体が入っており、底に沈殿した白が、品質の良さを物語っている。
最近では滅多に見掛けない其れに目を奪われ、思わず手を伸ばした。





「あっ!ナマエ、それ蜂蜜じゃないですかぁ!?」
「うん。今時、珍しいよね」



横から目を輝かせたサシャが身を乗り出す。
食らい付く勢いで顔を近付けてくるから、即、彼女から小瓶を遠ざけた。
取り敢えずその溢れそうなよだれを拭きなさい。





「おじさん、これいくら?」



麻の財布を広げながら、棚の向こう側に座る店員に声を掛ける。
…うん、ちょっと高いけど、それくらいなら買えそうだわ。
財布からお金を取り出して、代わりにそこに蜂蜜の小瓶を仕舞った。




「えっ、ナマエ、買うんですかそれ!」
「あげないよ」
「ええええなんでですかああああああ」




悲鳴のような声を上げて、私の腕を引くサシャ。
そんな目で見たって駄目、これはお土産なんだから。
そりゃあ、こんなもので許して貰えるとは思ってないけど……せめて謝罪を形にして、彼にプレゼントするのだから。

財布を上着の内ポケットに仕舞い込み、この世の終わりみたいな顔で縋るサシャの手を引いて店を出た。













love for a week 7/7 morning



(小さな彼は、喜んでくれるかしら)